就活生の中には大人気の航空業界、中でも最大手の全日空(ANA)と日本航空(JAL)に興味を持つ方は多いのではないでしょうか? 今回は「グローバルに活躍したい」「女性が家庭と両立しやすい」など様々な理由から就活生の人気を集める全日空(ANA)と日本航空(JAL)をグローバル戦略の視点から企業研究を行います。就職活動の際の企業選びの参考にしてください。
全日空(ANA)の正式名称は「全日本空輸」英語名は「All Nippon Airways」です。他の航空会社との連携グループである「アライアンス」ですが、同社は「スターアライアンス」に所属しています。同社系列のLCC(ローコストキャリア)はバニラエア、ピーチです。
全日空(ANA)のグループ全体での従業員数は2019年4月1日時点で39,243名です。
2019年3月期のグループの売上高は2兆583億円、営業利益は1,650億円と4期連続で過去最高を更新しています。
日本航空(JAL)の英語名は「Japan Airlines」で、日本で最も古い航空会社です。2010年に経営破綻に陥りましたが、再生し2012年に再上場を果たしています。所属アライアンスは「ワンワールド」です。子会社LCCはジェットスター・ジャパンです。また、「ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)」と呼ばれる新たなLCCを設立し、2020年にバンコク、ソウル線を就航する予定です。
日本航空(JAL)のグループ全体での従業員数は2018年3月時点で33,038名です。
2019年3月期のグループの売上高は1兆1,310億円、営業利益は1,455億円となっており、昨年同期比108.1%と増加しています。
航空業界各社、国際線を運航していますが、就航エリアは会社の特色により少々異なります。海外拠点を比較することで、今後の海外戦略の方向性が見えてくるでしょう。それはきっと航空業界志望者の方の会社選びのポイントにもなるはず。ここでは、全日空(ANA)と日本航空(JAL)のグローバル戦略を比較します。
全日空(ANA)はグローバル戦略を取るにあたり「日本と相手国におけるビジネス需要」を最優先に考えています。そのあとにレジャー需要を埋めるという流れです。基本的にデイリー運航できないマーケットには入っていかないという方向性を取っています。
全日空(ANA)の国際線定期便の就航は1986年から始まりました。以後3年間でグアム、ロサンゼルス、ワシントンD.C.、北京、大連、香港、バンコク、ロンドンに、その後20世紀の終わりまでに7都市を就航するようになりました。国際線路線が充実しはじめたのは21世紀になってからです。
同社の2019年時点での海外就航都市数は46カ所あります。中国を中心としたアジアの都市が多いですが、2019年にはオーストラリア西部のパースにも直行便を就航させるなど、ネットワークの範囲を広げています。パースは観光地として有名であるため、ビジネス需要に沿って路線を拡充する同社の方針に合わないと思えるかもしれませんが、西オーストラリアは資源ビジネスが盛んであることから開設に踏み切ったそうです。以下に全日空(ANA)が就航する都市をまとめています(他社便提携都市は除く)。
◎東アジア
北京、天津、大連、瀋陽、青島、上海、杭州、成都、武漢、厦門、広州、香港、台北、ソウル
◎東南アジア
ヤンゴン、バンコク、ハノイ、ホーチミン、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、マニラ、プノンペン
◎南アジア
ムンバイ、デリー、チェンナイ
◎北米・中米
サンフランシスコ、サンノゼ、シアトル、ロサンゼルス、ヒューストン、シカゴ、ニューヨーク、ワシントンD.C.、バンクーバー、メキシコシティ
◎ヨーロッパ
ロンドン、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、パリ、ブリュッセル、ウィーン
◎オセアニア・ハワイ
シドニー、パース、ホノルル
全日空(ANA)はグループをあげて、2018年度から22年度までの中期経営戦略において、成長の柱に「国際線の拡大」を挙げており、中東、南米、ロシアなどのホワイトスポット(未就航地域)への進出を中心に、路線網拡充を計画しています。また、以前から東南アジア中心とした海外エアラインとの提携も進めています。すでに2013年にはスカイチームのガルーダ・インドネシア航空と包括提携に合意し、コードシェアなどを実施しているほか(ただし今後ガルーダとの提携は解消される見込み)、2016年には同じくスカイチームのベトナム航空と資本業務提携を結ぶなど同社が所属するスターアライアンス以外の航空会社とも積極的な提携を図り、ネットワーク拡大に注力しています。そして2019年1月にはフィリピン航空の親会社であるPALホールディングスとも資本業務提携に至っており、東南アジア路線の拡充はますます進んでいきます。
また、国際線拡大に際して、首都圏空港(羽田・成田)における事業拡大も進めています。具体的には競争力の源泉となる人財の確保や育成、オペレーション基盤の強化を図るなどを進めていくことで基盤の強化を図っています。更に新たなプロダクト・サービスの展開やエアバスA380型機や、ボーイング787-10型機、ボーイング777-9X型機などの最新鋭機材を導入し、顧客満足度の更なるアップを狙っています。
日本航空(JAL)の2019年時点での海外就航都市数は36カ所あります。同社の国際線就航は1954年から始まっており、前述の全日空(ANA)と比較すると就航の歴史が古いと言えます。就航を開始してから、年々ネットワークを拡大しており、21世紀に突入する前からヨーロッパにアジアに、路線を広げていました。更に、すでに就航していたアメリカの都市への便も当初は東京発着のみでしたが、日本の地方空港の発着便も増やしており、積極的に海外ネットワークを充実させてきました。
現在においては、全日空(ANA)が就航している都市と比較すると、ビジネス需要よりもレジャー需要を取り込む方向性を取っていることがわかります。例えば、全日空(ANA)と比較して、ハワイにおいて、ホノルル線だけでなくコナ線を就航していることからもその方向性が読み取れます。また、2019年は2月より羽田=マニラ線、3月より成田=シアトル線を就航しています。
以下に日本航空(JAL)が就航する都市をまとめています(他社便提携路線は除く)。
◎東アジア
北京、天津、大連、ソウル、釜山、上海、広州、香港、台北、高雄
◎東南アジア
ハノイ、ホーチミン、バンコク、マニラ、クアラルンプール、シンガポール、ジャカルタ
◎南アジア
デリー
◎北米
サンフランシスコ、サンディエゴ、ロサンゼルス、シカゴ、ダラス、ボストン、ニューヨーク、バンクーバー
◎ヨーロッパ
ロンドン、パリ、フランクフルト、ヘルシンキ、モスクワ
◎オセアニア・ハワイ・グアム
シドニー、メルボルン、ホノルル、コナ、グアム
これまではビジネス目的での渡航者の需要よりもレジャー目的の需要を満たす方針で海外就航を進めてきた日本航空(JAL)ですが、ここ数年は東南アジア地域の路線との提携を進めるなど、最大の競合である全日空(ANA)とすでに提携している航空会社との提携にも乗り出し、ビジネスが盛んになっているアジアを中心とした路線の拡大に務めています。
というのも、日本人や訪日客のマーケットはすでに取り込んでおり、今後新たなマーケットを拡大してシェアを伸ばすには日本人や訪日客以外の顧客を取り込む必要性に駆られているためです。そういった背景から、日本航空(JAL)は2019年から20年に「ネットワークを磨き上げる」ことを目標に掲げ、 提携パートナーを拡げ、2020年度中のグランドデザイン「世界主要500都市への乗り入れ」の早期実現を目指しています。特に日本経由での北米-東南アジア路線の拡大に力を入れ始めています。具体的には、2018年10月には全日空(ANA)が先に提携を結んでいたガルーダインドネシア航空と、日本とインドネシアを結ぶ路線や、日本を発着するJALの北米路線でコードシェアを開始しているほか、2017年から2018年にかけて、ベトナムで急成長をしているLCCベトジェットエアやニューデリーに拠点を置くビスタラ航空、中国東方航空、メキシコのアエロメヒコ航空、アエロフロート・ロシア航空、ハワイアン航空とも提携を始めています。このいずれの航空会社も日本航空(JAL)が所属するアライアンスであるワンワールドに所属しているわけではなく、アライアンスを超えて積極的に提携を進めていることが伺えます。
路線拡充に向けて、あわせて同社は顧客が同社サービスをより快適に利用できるよう「旅客基幹システムの全面刷新」「アジア路線でのビジネスクラスシートのフルフラット化」「成田・羽田のラウンジの改修」も進めています。この動きは2019年4月より同社内に東京を初めシンガポール、上海、ロンドン、ロサンゼルスに拠点を置くグローバルマーケティング部を新設されたことでより一層全社で統一感をもったグローバル戦略のもとで加速しています。
全日空(ANA)と日本航空(JAL)の2社は同じ航空業界ではあるものの、企業研究してみると戦略に違いがあることがわかりました。ただし、これまで全日空(ANA)はビジネス需要を意識した国際線ネットワーク拡充、日本航空(JAL)はハワイ路線への注力などレジャー利用を意識したネットワークの構築を進めてきたという違いがありましたが、ここ数年では2社ともアジア地域を中心としたネットワークの拡充に乗り出しています。アジア地域はGlobalwingでインターン先をたくさん紹介していることからもビジネスの地として注目されていることがわかると思います。航空業界を目指している方はもちろん、そうでない方も世界情勢が如実に表れる航空業界の就航路線、今後も変化に注目すると面白いでしょう。
航空業界に就職したGlobalWing生の体験談はこちらからご覧いただけます。
<参考サイト>
・全日空公式ホームページhttps://www.ana.co.jp/group/about-us/
・日本航空公式ホームページhttps://www.jal.com/ja/
・東洋経済オンラインhttps://toyokeizai.net/articles/-/243024
・Travelvision http://www.travelvision.jp/interview/detail.php?id=85010
・LCCjp https://dsk.ne.jp/news/zipair_tokyo.html
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